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S氏は究極の姿と信じて疑わなかった空冷を諦めざるを得なかったが、そのスピリッツはこの画期的なエンジン開発の動力となったのである。 ろ四輪車にしろ、それまでの技術がどうであるかということなどは、いっさい念頭になく、完全なエンジンを目指して、自分がおもしろいと思ったこと、これならいけそうだと思ったことを、とことん追求していったのです。
(I著「わが友HS」)1972年n月、Hは赤坂プリンスホテルでCVCCエンジンを記者発表した。 マスキー法が成立してから2年後のことである。
早速アメリカに送られたCVCCエンジンはEPA(アメリカ環境保護庁)の排出ガス試験研究所でテストされた。 8日間かけて入念に行われた結果は、マスキー法の規制値を軽くクリアするものであった。
まさしくCVCCエンジンの性能は驚異的であった。 EPAのお墨付きで、このエンジンは、F、K、それにS氏が常に目標としてきたTにすら技術供与された。
そして、このCVCCエンジンが搭載された「シビック」は世界的なヒット車となった。 Hは、世界で最後発の自動車メーカーでありながら屈指のメーカーに駆け上ったのである。
日本では、このような成功に対しては常に嫉妬を伴う陰口がたたかれるものだ。 副燃焼室を持つ形状の特異性から、「癌つきエンジン」などと郷撤され、その奇矯な発想を冷笑されもした。
経済性の理由も含めてCVCCエンジンは今日ではほとんど見られなくなっているが、達成不可能と言われたマスキー法の基準を早くもクリアしたHのスピリッツは、世界の自動車業界に環境技術の可能性を実証した意味で特筆すべきものである。 ここで注目しておかねばならないことは、このような偉業が、創業者であるHS氏の現役時代に、S氏を否定することで達成されたことである。
世界一の二輪車メーカーを創ったのはS氏を中心とする創業者世代であったが、世界屈指の自動車メーカーを創ったのは、その後継者の世代なのである。 それは「革命的な世代交代」であった。

このような歴史を持つことで、Hという神話企業は、創業者を超えた生命力を得たということができる。 当時、世界でもトランジスタの研究を手がけている人はあまりいませんでした。
また、トランジスタの製造がむずかしく、一般向けの商品には使えないと思われていたのですが、それならば、製品化の一番乗りをしてやろうと考えたわけです。 トランジスタ開発は、われながら、大胆な決断だったと思いますが、まさに素人だからできたことでした。

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